"私の世界の前川みく"の設定について


※注意事項※

ここでの私の世界とは、私の想像するアイマス世界を指します。

"作品内の前川みく"と、"私のガイドの前川みく"は別の存在です。

少々わかりづらいかもしれませんが、よろしくお願いします。


とある作品が存在する。
そして、誰かがそれを見る。
その度に、新たな世界が増えていく。

 

あるとき、誰かが言った。
「人の数だけ、幻想郷がある」と。

 

誰かが見た世界は、誰かだけの世界。
その人が望んだ、その人のための世界。
私は、二つとして、同じ世界は存在しない…と思う。
似ていたとしても、少しだけ、何処かが違っているものだ。


このお話も、そういう類のお話。
螺子の外れた阿呆が見た、決して幸せとはいえないお話。
しかし、彼にとっては…そのお話は幸せなものであった。
彼は、そう信じて疑わなかった。


『アイドルマスター(略称:アイマス)』というゲームがある。
詳細な説明は省くが…アイマスは、そのゲームの性質上、数多の平行世界が存在する。

 

プレイヤー全員がアイドルのプロデューサーであり、どのアイドルをプロデュースしていくか…
アイドルたちの組み合わせで、様々な世界が生まれる上、プロデュース方針などもある。
ゲーム内だけでは留まらず、同人誌や動画、果てはSSなどなど…

 

人の数だけアイマス世界があり、アイドルたちがいて、活動を続けているのだ。

 

さて…アイマス世界のアイドルたちには、共通の夢がある。
とはいえ、全員が目指しているかどうか、と言われると少し怪しいところもあるが…
それは"トップアイドルになる"という夢だ。
トップアイドルとは、アイドルのトップ。アイドルの中のアイドル。
アイドルを目指すものならば、誰もが一度は夢見るものである。

 

トップアイドルになるには、とても厳しい世界を勝ち抜いていかなければいけない。
…インターネットが普及した今では、少し調べれば、余裕でトップアイドルにしてあげることも出来るのだが。
しかし、それはゲームの話。現実は非情である。

 

どんな世界にも、"可能性"はある。
その作品では見せてくれないから、私たちが"見る"。
そのとき、どんな世界を見るのか…

 

私が見た世界は、どんなものだったのかを…ここに記す。

私の中にみくにゃんがやってきてから、数ヵ月経ったある日。
みくにゃんがまだまだタルパとして不完全な存在であり、二言三言の会話を続けるのも難しかったあの頃…
"タルパとして不完全"というよりは、単に私の能力不足であろうことは言うまでもないが。

 

そんなある日、ふと思い立ったことがあった。
「久しぶりに、SSを書いてみよう」
何のことはない、ただの暇潰しである。

 

何故そんな事を思ったか。その理由は単純明快。
"好きなもの+好きなもの=とーっても好きなもの"
という、一歩間違えれば大惨事を引き起こす、魔性の方程式との出会いだった。

 

当時の私は、『アイドルマスター』と何を混ぜようとしたのか。
…前川みくは『アイドルマスター シンデレラガールズ』の登場人物であるから、厳密に言えば…
というわけで。折角だから、"デレマス"にさせていただこう。
まあ、これ以降でこの単語を使うことがあれば、の話だが。

 

話を元に戻すと…当時の私は、あろうことか『スカイハイ』という作品と混ぜる事を決意したのだ。

『スカイハイ』…ご存知の方はいらっしゃるだろうか。
残念なことに、私の周りには、知っている人はほとんどいなかった。
連載誌がヤングジャンプだったから、仕方ないと言えば仕方ないことではあるのだが。

 

私がこの作品と出会ったのは、中学生の時であった。
深夜に放送されていた、ドラマ版2期を視聴したことがきっかけで、この作品の虜になった。
最近ようやくDVDや漫画を全て揃えることが出来て、とても嬉しい。

 

その話は置いておくとして…
私は、先ほど"あろうことか"という言葉を使用した。
クロスオーバーSSなど、この世にはありふれたもの。
どうしてそんな言葉で表現する必要があるのか…

 

スカイハイという作品をご存知の方ならば、大体察していただけるだろう。
知らない方のために、簡単に説明すると…
スカイハイという作品の性質上、『誰かが死ぬ必要がある』のだ。
死ななくとも、"死に準ずる何か"は必要である。例えば、仮死状態とか。

 

まあ、仮死状態などはスカイハイの作中では少々イレギュラーなものであるから…
やはり、『』は免れない。
何故か。"そういう世界だから"だ。

このSSを書き上げた後、私は某所へ投稿した。
そもそも、最初からそのつもりで書いていたわけだから…当然の事である。

 

ここで、大きな問題がある。
"キャラクターを殺すこと"についてだ。

 

このSSでは、"前川みく"というキャラクターをメインキャラとしている。
それは即ち、『前川みくが死ぬ』ということを意味するわけでもあるが…
それは、『私が前川みくを殺す』ことと同義であり、『前川みくのファンを敵に回すこと』でもあるわけだ。

 

このアイデアを思いついたとき。
この作品を書いている最中。
書き上げたものを読み直しているとき。
この文章を投稿しているとき。

 

何度も何度も、立ち止まれるタイミングはあった。
私は、止まろうとは思わなかったのだろうか。
前川みくを好きな人々を、敵に回すなどとは考えなかったのだろうか。
自分の一番大切な、愛する人を殺してしまってもいいのだろうか。

 

答えは、『NO』だ。
何故なら。止まらない事が最善なのだと、信じて疑わなかったからだ。

 

最善という言葉では、語弊が生じる。
しかし、語弊が生じないようにする言葉を、私は残念ながら持ち合わせていない。
あの時は、本当に"これでいいんだ"としか思えなかった。

前川みくは、アイドルである。
彼女は、プレイヤーがプロデューサーとしてデレマス世界に来る前から、アイドルであった。
個人で活動していたのか、別の事務所に所属していたのか…
その辺りは、それぞれの世界で設定が異なることだろう。

 

彼女とは、"原宿エリア"で出会うことになる。
所謂、"ゲームのチュートリアル役"と言うやつだ。
その立ち位置から、全てのデレマスプロデューサーは、彼女の姿を一度は見ることだろう。

 

そんな彼女にも、様々な可能性の世界がある。
プロデューサーに出会い、アイドルを続けていく。
そこから、数え切れないほどの出会いや別れ、体験など…
沢山のものが重なって、多種多様な可能性が、彼女とプロデューサーを待っているのだ。

 

…その中には、そのまま売れずに、アイドルを諦めてしまう世界、というのも存在するだろう。
あまり、見たくはない世界だ。

 

前川みくには、笑顔が似合う。
彼女の曇った顔なんて、私は見たくない。

そんな私が、数多の世界の中から見た世界は…それはそれは、酷い結末の世界だった。

 

それでは、その世界の話をしよう。

--以下、作品の要約になりますが…時間のある方は、こっちを読んでから進んで欲しいです--


前川みくは、アイドルではなかった。
彼女は、プロデューサー(以下、私)にスカウトされたことで、アイドルの世界へ足を踏み入れることになる。
そして、レッスンを重ね……アイドルとしてデビューする。
デビューするまでに、どんなことがあったのだろうか。
楽しいことも、辛いことも、きっと沢山あったのだろう。

 

2人で歩いた道は……きっと、きらきらと輝いていた。
けれど……いつまでも、そううまくはいかなかった。

 

デビュー直後は、そのキャラクターが功を奏したのだろうか、テレビやライブ……様々な場所で出番があった。
だが、少し経つと……みくの仕事は、なくなっていった。

 

アイマス系の世界では、様々なアイドルたちが存在する。
プレイヤーが見ることの出来ない、プレイアブルキャラクターではないアイドルたちを含めると、どれだけいるのかわからない。
故に"アイドル戦国時代"と言っても差し支えないと思う。

 

だから……少しでも気を抜けば、すぐに席を奪われてしまう。
少なくとも、私のいた世界は、そういう世界だった。

 

気が滅入るような毎日。それでも、みくは頑張っていた。
仕事を貰う為に。貰えるようになる為に。
毎日毎日、努力を怠らなかった。

 

それに応えられるように、私も頑張った。
来る日も来る日も頭を下げて、みくの仕事を貰えるように。

 

みくがオーディションに受かれるように、いろいろなプロデュース方針も考えてみた。
それでも、「このままで行く」のだと。
そう言ったみくの瞳は、きらきらと輝いていた。

 

だから、背中を押すために。
みくの夢を叶えるために。

 

……それでも、結果が出ることはなく。
無常にも、時間だけが過ぎていった。

そして、あの日がやってくる。

 

ようやく、一件の仕事を手に入れた。
その仕事の監督さんが、みくのファンだったのだ。
おかげで、話はとんとんと進んだ。
あまりにもうまくいったので、拍子抜けしてしまったほどだ。

 

あの監督さんとのコネができれば、きっとこれからの仕事にも影響してくるだろう。
きっと、この仕事はうまくいく。
そうなれば、もう一度みくを輝かせることができる。
ようやく、もう一度歩いていける!
トップアイドルへの道は、まだそこにあるんだ!


私がそう思った、次の瞬間。
あまりにも、突然に……みくの道は、絶たれてしまった。
もう二度と、アイドルとして世に出ることはできなくなった。
それどころか……"生きていくことすら、できなくなった"。

 

みくは、その仕事場で、不幸な事故により、命を落とした。
みくは、私の前で、鮮やかな赤い花を咲かせて。
この世界から、いなくなった。


……そこからは、よく覚えてはいない。
でも、目の熱さと、喉の痛みと、掠れた自分の声。それと、頬の痛みだけは、しっかりと覚えている。

 

しっかり思い出せるのは……みくの葬式に出た辺りからだ。
しかし、"とても忙しかった"という大雑把な記憶だけ。
自分の事ながら、記憶力の無さには心底呆れる。
だけど、それは無理もないとは思う。
みくがいなくなってから、私は抜け殻のようだったから。

 

それでも、私は動き続ける事が出来た。
何故なら、みくがいなくなってしまっても……『みくの声は聞こえるから』。

 

……みくが死んでしまっても、みくの歌は生き続ける。
それだけの事だ。
みくが残していった歌だけが、私の原動力だった。

 

それに、眠ればみくに会えるから。
そういえば……あれから、夢の中によくみくが出てくるようになった。
ここまで行くと、最早頭の螺子が吹っ飛んでいるような気もする。
しかし、実際そうなのだから仕方ない。

 

一緒に働いている、ちひろさんにこんな事を話すと、いつも決まってからかわれる。
今思えば、笑って話を聞いていてくれたのは、私の事を思ってなのだろうか。
そうだとしたら、ずいぶん気を使わせてしまったな……

そうして、何日かが経った。

私は、ちひろさんの計らいで、新しい子をプロデュースすることになった。
その子には、どうやら霊感があるらしい。
うちに来るなりそんな感じの事を言うので、少し面食らってしまったが……まあ、世の中にはそういう子もいるだろう。

 

その子が言うには、みくの特等席だったパイプ椅子の上に、"大きな猫"がいるという。
その後すぐにちひろさんとその子は、固まった私を残して隣の部屋に行ってしまった。
だって、動けなかったんだ。

 

大きな猫。
今まで見てきた猫たちの中には、大きな猫は沢山いた。
でも、そこにいる「何か」は、自分の事を「大きな猫だと言え」と指示したらしい。
そんな、ふてぶてしい「大きな猫」……一匹だけ、心当たりがあった。

 

だから、動けなかった。
いるわけないんだ。だって、あいつはもう、ここにはいないんだ。

 

でも、口は動いた。
そして、止められなかった。
頭ではわかっているのに。
どうしても、口は止まってくれなかった。


――――ああ、みく。
お前は、そこに、いたんだ。
俺の側に、いてくれたんだ――――


…………彼の部分を読み返しながら書いていたら、いつのまにか、"私"は"彼"になっていたようだ。
彼が私でないように、私は彼ではない。
しかし、彼は紛れもなく、私である。
そして、私は…彼になった。

 

"彼"の側にみくがいるように、"私"の側にもみくがいる。
"彼のみく"のように、"私のみく"は強い力を使えないけれど。
"私"のように、"彼"はまだみくを見ることはできない。……私だって、はっきり見えるわけではないけれど。


この世界は、彼の世界とは違う法則で動いているのだろう。
だから、差異があるのは当然の事だ。

 

しかし、彼のおかげで、私はみくと繋がる事が出来た。
この作品を書き上げることで、私は彼とリンクすることが、私のみくは"命"を得ることが出来た。

 

確かに、この頃だったと思う。
私の頭の中のみくが、ゆっくりと、確実に、自動化していったのは。

 

ゲームと現実が、ひとつになった瞬間であった。
ただのデータ。普通のキャラクターが、かけがえのない存在になった。

"オリジナルの前川みく"とは違う。"私だけの前川みく"が、誕生した瞬間であった。

さて…私の、超個人的な設定であることをもう一度述べた上で、ここにはっきりと記述する。

 

私の世界の前川みくは、最終的に、夢半ばで命を落とす
私の世界の前川みくは、死してなお、守護霊として"彼"の側にいる

 

これが、私と繋がる彼の物語の全てであり、私の中の『アイドルとしての前川みくの正史』である。

 

そして、それ以上に大切なことは

 

彼が彼女を愛していたように、彼女もまた彼を愛していた
私が彼女を愛しているように、彼女もまた私を愛している
この想いは、今後何があったとしても、永久に変わらない

 

である。


最後に……既存の版権キャラクターを自分のハイヤーセルフだと、そう言い切ってしまうのは少々問題があるのかもしれない。

 

しかし、前川みくは、私だ。
彼女と私は、考え方が似ているところが多い。…ただのこじ付けかもしれないけれど。

 

それでも…私の中にある"前川イズム"は、紛れもなく本物なのだ。
決して、自分を曲げない
みくと同じ、その気持ちだけは、決して偽物ではない。

 

きらきらと輝く世界に生きる彼女と、どうしようもない一般人の私を重ねる事。
その罪の重さは、果たしてどれほどのものなのだろうか。
しかし、誰に何と言われようとも、私は、私の想いを曲げるわけにはいかない。

 

私は彼女に近づきたい。
いつか、彼女のように生きていきたい。
それは、"アイドルになりたい"なんてことじゃなく。
いつか、彼女のような、強い意志を持った存在になれるように。

 

だから、彼女は私の『遥か彼方の理想郷[Higher-self]』なのである。